ウエルネスメッセージ

ウエルネス5S運動

ウエルネス5S運動

一般財団法人日本ウエルネス協会

専務理事 古川 文隆



<29200日の生き方>

人生80年時代。日にちに置き換えると、私たちは「29200日」生きることになる。

筆者が生まれた昭和23年当時、平均寿命は男性50歳、女性54歳。今年7月厚労省は、女性85.90歳、男性79.44歳と、発表。「女性は、主な国・地域別で26年間継続世界1位を香港に抜かれ、2位」。その理由を「大震災と20代女性の自殺者増加」と説明した。

「3万人」。14年間連続、自殺者は年間3万人超え。幸福の根源が「生きる」ことであるならば、実に、不気味で異常な数字、不健康な社会現象だ。

「1067万人」。人口1億2755百万人のうち、糖尿病及びその予備軍とされる患者数だ。

今日の我が国における健康課題は、高齢社会、医療費の増大をはじめ、環境医学的側面、また社会構造や労働形態の変化に伴う疾患等々多岐にわたり、複合的に山積している。「健康社会」を目指した日本の過去50年間の実績は国際的に評価されてきた。次の50年、「健康」に「文化」を加味した新しい健康観・ウエルネスを世界に発信していく必要があると考えている。



<ウエルネスと健康文化>

ウエルネスとは、29200日を「疾病・障害の有無にかかわらず、明るく前向きに生きようとする心(ウエルネス・マインド)を育てること」を意味する。

当財団は、厚生労働省の所管で昭和60年以来、日本で唯一のウエルネス専門機関として国民の健康づくり運動に携わってきた。(平成24年7月内閣府所管の一般財団法人へ移行)

筆者らは「健康文化都市推進会議」(平成4年)で、日本独自の「健康文化」と言う言葉を創作し、新しい健康観を「健康とは単なる疾病にかかっていないということではなく、充実した日常生活を送り、自己実現を達成するための最適な状態」と定義した。

「健康の価値を育て、創造し、健康な社会を創ることが、人間が作りうる文化的生活であり、健康文化の時代創造が日本の特性を生かした生活哲学」に基づき、厚生省と「健康文化都市」「健康保養地」構想をはじめ「森林セラピー」「健康日本21」等を推進した。

今日的健康課題の解決の糸口として、政治をタテ糸に、行政をヨコ糸に、そして民間を含めた関係学会を筋交いに織りなす形で、再考と吟味を重ねた議論を期待したい。

平成8年、厚生省は「成人病」を「生活習慣病」へと行政用語を変更した。筆者は、そのワーキング会議で、アメリカで成功していた健康キャンペーン「ウエルネス5S運動」を紹介した。頭文字に「S」が付くモノとの付き合い方だ。S=シュガー(糖分取り過ぎ注意)S=ソルト(塩分控えめ)S=スナック(間食避ける)S=スモーキング(煙草・禁煙)S=シッテイング(座りっぱなし・身体を動かす)

当時、アメリカ厚生省は「健康総合戦略」を策定、発表。内容は、中年期の死因(1位~10位)寄与率を試算したデータで、結果は健康施策にインパクトを与えた。

表

結果、健康づくりにおける人々の生活習慣の役割が科学的に裏付けられ、健康施策の重点課題が、治療中心から予防へと大転換した。

個人の「生活の質」(QOL)と、「健康な地域・環境づくり」(QOC)の重要性が説かれ、日本もこの潮流を継承しているが、依然として医療への依存が強いように感じる。平均寿命と言う時間的な量の長さを競うのではなく、健康寿命と言う人生の質が問われている。



日本流「ウエルネス5S運動」のすすめ

[ S=Self-Esteem(セルフエスティーム) ]

「少怒多笑」。「一笑健康」。薬にはあるが、笑いには副作用がない

「アメリカ笑い治療研究学会」が設立(1983年)、笑いはストレスを解消し、免疫力を高める等と報告された。日本でも同様に、科学的研究がすすめられている。

当財団も、これまで、笑いの集団や健康落語家と「笑いと健康」イベントを開催してきたが、笑いの数だけ健康なる、怒りの数だけ病気を招くことを実感した。眉間に皺ではなく、試しに、鉛筆を口で銜えて笑い顔をつくってみる。これ、笑いの心理学。

我が国に古くからある、「快食、快眠、快便」の健康バロメーター三要素に「快笑」をプラスしたい。自殺や、いじめ、学校崩壊など問題行動が蔓延、殺伐とした時代のカンフル剤は、「笑い」「ユーモア」だ。笑いは、心の余裕の代名詞。外交も政治も上品なジョークが人と人の間にある潤滑油になる。長寿研究によれば、ユーモア精神に溢れ、好奇心旺盛でポジティブシンキングな方が健康長寿者。生き方の根底に流れるものは「笑い」。



[ S=Self-Care(セルフケア) ]

自己管理。疾病原因が生活習慣に起因する以上、自分が自分の名医・上医(優秀な医者は病気を予防する)であることが求められる。「大きな便り」「小さな便り」など、身体からのメッセージと対話し(目で確認)、無理なく日頃から自己管理を。最近では、尿中糖検査の検査試験紙も市販、乳がん早期発見も触診の仕方を学ぶことで体得できる。

健康管理は専門家任せの“他者依存型”から、自分で養生する生活習慣を主体的に身につけたいもの。但し、氾濫する健康情報を正しく見極める選球眼を養うことも忘れずに。健康の「健」の字は「人」を「建てる」と書く。自宅ならば、なおさら手間暇かけ掃除、電気・ガスの点検等をする。家の自己管理、ストレス解消になる。自分の家以上に、自分の身体を大切に見つめ直し、病んだ箇所に気遣い、健康を勝ち取る努力が求められる。

国も、黒船的高齢社会を背景に、個人が健康情報を管理・活用できるPHR(パーソナルヘルスレコード)等、世界に誇れる日本型健康サービス産業の創出を議論し発信すべき時だ。今秋から企業のメンタルヘルス事業が、義務化・実施されるが、働く人の「欝」、「ストレス」等の健康課題に「ワークサイトウエルネスプログラム」を提供したい。



[ S=Smart(スマート) ]

「もったいない心」を大切にした賢人文化人。それは「①賢く、②自然と調和し、③身体・生活等の無駄をなくす」生き方でもある。

グローバルネットワーク社会では、「ひと」も「まち」もそれぞれの存在意義(他との資質的・感覚的・文化的違い)をより深く考え、相互依存関係を見極める視点が必要だ。ひと」は横並びの「人並み」志向から、個性やアイデンティティの確立と自分流の選択に価値を置き、他人と違う「自分らしい」ライフスタイルを求める。「まち」も、シビル・ミニマムという「文明」の水準を達成した今、個性という「文化」の導入が求められている。

日本の国に誇りと愛着を抱き「わがまち」意識を育てること。「わが」「まち」意識は、「主体としての人間」が「環境としてのまち」に価値を見出し、まちとの間に精神的、情緒的な繋がりを持つ時に成り立つものだろう。

当財団では、自然は全ての生命の存続基盤であり、ウエルネスを基本とした“人間と自然が生命力に満ち溢れ、共存できるサステイナビリティ社会”を「健康(健幸)文化都市」(ウエルネススマートシティ)と名付け、その社会の実現を事業目的としている。

具体的には、自治体の人口の過疎、過密を分類し、課題を抽出、その対応ステップと社会行動のためのファンダメンタルズ整備(診断・選択・実現)が必要と考えている。



[ S=Skin Ship(スキンシップ) ]

会話の達人。コミュニケーション、また「触れたい」という人間の皮膚感覚が求めている生理的欲求を大切にする生き方。

「マザリング」、赤ん坊と母親の信頼関係をあらわす言葉だが、幼少時に親とのスキンシップに欠ける子どもは、心身の発育発達に何らかの影響を与える、との調査報告がある。

19世紀、アメリカの孤児院で「一歳以下の新生児、清潔さと安全性を確保、食べ物を与えたが、そのほとんどが衰弱死」という悲惨な出来事があった。新生児を優しくあやしながら抱える人がなく「身体的接触」の欠如が原因と報道された。スキンシップがないことに起因する疎外感、孤独感による、社会からの遊離は何よりも恐ろしく不幸なことだ。人が人によって癒される社会の構築、一人ひとりが認められ安心して自分らしさを発揮できる学校・職場・地域を目指したい。

震災後「絆」が見直されている。災害対策も同様だが、健康づくりも「自助」を基本に「共助」「公助」の三位一体で再考したい。三位の櫛は、日本固有の健康文化、地域文化。日本には、古代から「言霊」(ことだま)という、日本人の精神性の中核をなす思想・文化が受け継がれてきた。言葉によるコミュニケーション等を通しながら、人は人生を磨き、他人・社会との信頼関係を深めていくものだ。

WHOは「生きがいある老後の条件」に仲間づくり・友人を持つことを挙げている。情報社会だからこそヒューマンサポートとスキンシップが肝要である。



「ウエルネス」で、人も社会も変わる

世の中、政治も経済も暗いニュースばかり。ウエルネスで、あなたの人生と、社会を、心豊かに、実りある「よき人生」にするために、本稿を参考に、家庭版・職場版・地域版、そして政党版・省庁版等、自分流「ウエルネス5S運動」を考え、工夫し、判断し、実践、挑戦することが、21世紀の新たな社会目標としての「健康価値創造」である、と考えている。

「S」に拘らず、例えば、時代のテーマとして「衣・食・住」から「医・職・充(充実感・遊・学)」との見方もできる。また、生き方のニーズを「ア=アメニティ」「イ=インテリジェンス」「ウ=ウエルネス」「エ=エコロジー」「オ=オリジナリティ」との分析もできる。

始めるか始めないか、続けるか続けないかは、It’s up to you.---あなた次第。

「カレント」(2012.10~11月)(潮流社刊)に当財団、古川専務理事が寄稿したものを転載致しました。



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ウエルネスレター・メッセージ

ウエルネスレター24009.pdf     「私の織田信長論・私の坂本龍馬論・私の長嶋茂雄論」
ウエルネスレター24008.pdf     「ウエルネス情報」
ウエルネスレター24007.pdf     「今、再び金子みすゞを想う」
ウエルネスレター24006.pdf     「ウエルネス5S運動」
ウエルネスレター24005.pdf     「健康教育とウエルネス」
ウエルネスレター24004.pdf     「人生1日時計」
ウエルネスレター24003.pdf     「雑感 日中関係に想う」
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